監督・脚本:エナ・センディヤレヴィッチ 撮影:エモ・ウィームホフ 編集:ロット・ロスマーク 衣装:ネダ・ナゲル 音響:ヴィンセント・シンセレッティ 音楽: エラ・ファン・デル・ワウデ
出演:サラ・ルナ・ゾリッチ、エルナド・プルニャヴォラツ、ラザ・ドラゴイェヴィッチ

原題:TAKE ME SOMEWHERE NICE 日本語字幕:上條葉月 提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション 配給:クレプスキュール フィルム

[2019年/オランダ・ボスニア/オランダ語・ボスニア語/カラー/4:391] © 2019(PUPKIN)

第48回ロッテルダム国際映画祭タイガーアワード/2019サラエボ映画祭ハートオブサラエボ賞/第21回ソウル国際女性映画祭最優秀映画賞

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INTRODUCTION​

オランダからボスニアへ 少女でも大人でもないアルマの”自分探し”の旅が始まる。 誰か連れ出して…この退屈な世界から

大人への入り口に立つアルマは、オランダ育ちのボスニア人。母と自分を置いて母国に帰った父が入院し、死にかけているという知らせを受け、父に会うため一人ボスニアへ向かう。冷たい態度で彼女を迎える従兄弟のエミルと、下心いっぱいで近づくその親友デニス。エミルのアパートに着いたものの、キャリーケースの鍵が壊れ、母に買ってもらったペラペラのベロアのワンピース一枚の着たきり雀となったアルマ。
ひとり夜の街をさまよい、まるで大人ぶるように髪をブロンドに染める。父の病院に車で送ってほしいと頼むが、忙しいからとエミルたちに相手にされず、仕方なく長距離バスに乗り込むアルマだったが…。
この物語は、アルマ同様にボスニア生まれオランダ育ちのエナ・センディヤレヴィッチ監督による長編デビュー作。監督が心酔するジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に影響を受けて描かれた作品だ。。男女3人の主要キャラクター、静的でミニマルな演出、ゆったりと流れる時間、そして余白に満ちた空間。さらにアイデンティティが不確かな主人公の”自分探し”という普遍的なテーマを追求した本作は、世界中から優れたインディペンデント映画が集うロッテルダム国際映画祭コンペティション部門でタイガーアワードを受賞し、国際的にも高く評価された。
少女から大人になるとは、どういうことなのだろうか。母と父という異なるアイデンティティを持つアルマの本当の居場所はどこなのか。オランダでもなくボスニアでもない、彼女にとっての素敵な居場所とは何だろう。
心地よい風と太陽、水の煌めき…アルマに「とびっきりの夏」はいつ訪れるのだろうか──。

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Story

揺れるカーテンの隙間からのぞいたブティックのミラーが、ワンピースを選ぶ一人の少女を映している。アルマ──オランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かう。

ボスニアの空港で彼女を出迎えたのは、従兄のエミル。終始ぶっきらぼうな態度で、アルマをアパートに連れ帰っても言葉少な。やがて「急ぐから」とアルマを部屋に置き去りにしてしまう。キャリーケースは壊れ、荷物も取り出せないまま。居場所のない空間に身を持て余し、アルマは街へ出た。そして衝動のように、髪を金色に染める。その夜、アパートの扉の前で眠り込んでいた彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。彼だけが、アルマの話に耳を傾けてくれる。

翌日。父のいる町・ポドべレジイェを目指し、小さなスーツケースを引いてバスに乗り込んだアルマ。だが休憩の間に、バスは彼女を置き去りにし、荷物だけを乗せたまま走り去ってしまう…。

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Comments

オフビートな旅路、たどり着くのは風の音しか聞こえない贅沢

──── Hollywood Reporter

セクシーで緻密、リズムに酔うスタイリッシュな一作

──── Codigo Espagueti

青春の苦さと不条理を、ユーモアを交えて描いた“自分になる”ための通過点

──── Cinema e Missili

ソフィア·コッポラの初期作を想起させながら、シャンタル·アケルマンの知性、ヴィム·ヴェンダースの距離感、ジム·ジャームッシュの諧謔、そしてデイヴィッド·ホックニーの光を現代に融合したような一作

──── Irish Film Critic

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Staff

監督・脚本:エナ・センディヤレヴィッチ
Ena Sendijarević

1987年ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。モドリチャにて幼少期を過ごすも、ボスニア紛争の勃発により家族と共に避難。ベルリンを含む約20回の転居生活を経て、2002年にオランダ・アムステルダムに移住した。アムステルダム大学およびベルリン自由大学でメディアと文化を学び、2014年にオランダ映画アカデミーで脚本と演出を専攻、卒業。難民としてオランダに渡った自身の背景や、複雑なアイデンティティの問題は、彼女の作品全体に深く息づいている。2013年、初の短編映画『Reizigers in de Nacht(夜の旅人)』を発表。2016年には、オランダに逃れたボスニア難民家族の移住をテーマにした短編映画『Import』が、カンヌ国際映画祭監督週間で上映され、大きな注目を集めた。2019年、『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』で長編デビュー。ミニマリズム、東欧的ロードムービー、 キッチュな美術センスを融合させ、主人公アルマの内面と不安定な旅を詩的かつユーモラスに描いた。

撮影監督:エモ・ウィームホフ
Emo Weemhoff

オランダ生まれ。インディペンデント映画やアートハウス系作品で評価されるビジュアル・スタイリスト。構図へのこだわりが極めて強く、そのカットの多くは一枚の写真としても成立するほど精緻に設計されている。彼の映像表現の特徴は、抑制された色調、パステルカラーの繊細な使い方、そして自然光と影のコントラストによる独特の静けさ。ミニマルな構成を好み、カメラの動きは最小限にとどめられ、観る者に静的余韻を残す。

音楽:エラ・ファン・デル・ワウデ
Ella van der Woude

スイス生まれ、オランダ育ちの作曲家/シンガーソングライター/映画音楽家。映画・テレビ・インディーズ音楽の分野で幅広く活動し、ジャンルを超えて繊細な音世界を構築してきた。映画音楽家としての彼女の特徴は、静けさや余白を大切にした、内省的でリリカルなスコア。ピアノ、シンセサイザー、弦楽器を柔らかく溶け合わせ、夢と現実のはざまを漂うような音を紡ぐ。

Cast

サラ・ルナ・ゾリッチ(アルマ役)
Sara Luna Zorić

2000年、オランダ生まれ、ボスニアとセルビアの血を引く。旧ユーゴスラビア映画は幼少期から身近な存在であり、両親は彼女に地域の言語と文化を学ぶよう促した。映画初主演となった本作では、主人公アルマを自然体で演じ、その奔放さ、繊細さ、そしてどこか疎外感をまとったような雰囲気をあわせ持つキャラクターで一躍注目を集めた。監督のエナ・センディヤレヴィッチはFacebookで彼女の存在を知り、その独特な雰囲気と空気感に強く惹かれたと語る。

ラザ・ドラゴイェヴィッチ(デニス役)
Lazar Dragojević

1996年、モンテネグロ・ポドゴリツァ生まれ。主にインディペンデント映画やヨーロッパのアート系映画に出演してきた注目の若手俳優。本作では、主人公アルマがボスニア滞在中に出会う、ミステリアスで不思議な魅力を放つ青年デニス役を演じた。ときに無責任で気まま、どこかに孤独を抱えた人物として描かれ、その静かな存在感は各国で話題を呼んだ。

エルナド・プルニャヴォラツ(エミル役)
Ernad Prnjavorac

ドイツ・プフォルツハイム生まれ。本作では、アルマの従兄弟であり、ボスニアで彼女を迎えるエミル役を演じた。冷めた雰囲気と現実感のあるキャラクターが印象的で、無愛想ながらも、無愛想ながらも、どこか憎めない“人間くささ”を体現している。TVや短編作品への出演を経て、本作が長編映画デビューとなる。

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Theatre

特別鑑賞券¥1,500(税込)絶賛発売中!(当日一般¥1,900円の処
★劇場窓口でお買い求めの方にB3ポスターをプレゼント(限定数)

劇場名TEL公開日前 売
東 京シアター・イメージフォーラム03-5766-01149/13〜
大 阪テアトル梅田06-6440-59309/19〜
京 都アップリンク京都075-600-78909/19〜
長 野上田映劇0268-22-026910/3〜
長 野松本シネマセレクト0263-98-492810/3〜
宮 城フォーラム仙台022-728-786610/3〜
栃 木小山シネマロブレ050-3196-900010/10〜
広 島横川シネマ082-231-100110/18〜
静 岡静岡シネ・ギャラリー054-250-028310/10〜
千 葉キネマ旬報シアター04-7141-723810/11〜
愛 知ナゴヤキネマ・ノイ052-734-746710/24〜
兵 庫元町映画館078-366-2636近日公開
石 川シネモンド076-220-5007近日公開
群 馬シネマテークたかさき027-325-1744近日公開